引張試験機
概要
引張試験機では、最も基本的で一般的な種類の機械的試験を実行します。引張試験では、材料に引張力を加え、応力に対する試験片の応答を測定します。これによって材料の強さや、どこまで引き延ばせるかを測定します。引張試験は、通常、電気機械式または万能試験機で簡単に行うことができ、完全に標準化されています。
引張試験機
コンポーネントと部品
引張試験は、引張試験機(別名「万能試験機」)を用いて行われます。引張試験機は、ロードセル、試験ソフトウェア、用途に応じたグリップ、そして伸び計などの付属品を備えた試験フレームで構成されます。試験を行う材料の種類により、必要となるアクセサリーの種類が決まります。また、試験機の荷重容量範囲内であれば、1台の装置で治具を変更するだけで、どのような材料でも試験することが可能です。

引張試験機 | |
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1) | 試験機 引張試験機の荷重フレームには、その容量に応じて、シングルコラム構成かデュアルコラム構成のいずれかがあります。 |
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ソフトウェア 試験用ソフトウェアは、オペレーターが試験メソッドを構成し、結果を出力するために使用します。 |
3) | ロードセル ロードセルとは、試験片に加わる力を測定するトランスデューサーです。インストロンのロードセルは、ロードセル容量の1/1000の精度を持ちます。 |
4) | グリップと治具 さまざまな材料、形状、サイズの試験片をグリップするために、幅広い試験片グリップおよび治具が用意されています。 |
5) | ひずみ測定 一部の試験メソッドでは、荷重を受けた試験片の伸びを測定する必要があります。インストロンのAVE2は、試験片の長さの変化を±1 µmまたは読み取り値の0.5%まで測定します。 |
引張試験機は、0.02 N~2,000 kNまで、さまざまなサイズと容量で取り揃えています。ほとんどの低荷重試験は、インストロンの6800シリーズ等の電気機械式のシングルコラムまたはデュアルコラム卓上型試験機で行われますが、高荷重の用途には電気機械式の5980シリーズのような床置型試験機が必要です。インストロンのIndustrialシリーズの大容量フレームは、油圧サーボモーターを搭載しています。



静的油圧Industrialシリーズ
Industrialシリーズは、300 kN(67,500 lbf)~2,000 kN(450,000 lbf)の範囲にわたる引張および圧縮アプリケーション用の高容量油圧式試験機で構成されています。
詳細情報
引張試験規格
プラスチック、エラストマー、金属の試験規格
ほとんどの引張試験は、 ASTMやISOといった規格組織によって公開された、実績のある規格に基づいて実施されます。試験規格には、さまざまな種類の材料(金属、プラスチック、エラストマー、織物、複合材料に加え、医療製品、自動車部品、家電などの完成品)において許容されている試験パラメータと試験結果が定められています。これらの規格は、サプライチェーンに入る材料と製品が、予測可能な機械的特性を示し、予期される最終用途において故障することがないように定められたものです。製品の欠陥によるコストや安全性への影響は計り知れないため、製品が適切な規格に適合しているかどうかを判断しやすくするために、高品質で正確な試験機に投資することが望まれます。
ASTM E8 / ASTM A370 / ISO 6892
ASTM E8、ASTM A370、ISO 6892は、金属および金属材料の引張試験に関する主要規格です。金属試験では、試験の制御方法が主な考慮事項となりますが、正確な試験結果を得るには、クロスヘッドのコンプライアンスとひずみ制御を十分に理解しておく必要があります。
引張試験のデータ分析
材料の機械特性の理解
材料や製品の張力を測定することで、製造業者はその引張特性の完全なプロファイルを得ることができます。このデータをグラフにすると、応力/ひずみ曲線を得ることができます。これは、力が加わったときの材料の反応を示すものです。求められる機械特性の測定は規格によって異なりますが、最も注目すべきは、破断または破壊のポイント、弾性係数、降伏強度、そしてひずみです。

極限引張強度
材料の最も重要な特性の1つとして挙げられるのは、極限引張強度(UTS)です。これは、試験時に試験片が受ける最大の応力を表します。UTSは、材料が脆いか、延性があるか、またはその両方の性質を備えているかによって、試験片の破断強度と一致することもあれば、一致しないこともあります。試験室における試験では延性を示す材料であっても、実際の使用時に極寒にさらされると、脆さを露呈することがあります。
フックの法則
ほとんどの材料では、試験の初期段階で、加えられた力または荷重と、試験片が示す伸びとの間に、線形関係が見られます。この線形領域では、線は「フックの法則」と呼ばれる関係に従います。すなわち、応力とひずみの比は一定となります()。Eは、応力(σ)とひずみ(ε)が比例する領域における直線の傾きであり、「弾性係数」または「ヤング率」と呼ばれます。
弾性係数
弾性係数は材料の硬さを表し、曲線の初期の線形領域でのみ適用されます。この直線領域内で、試験片から引張荷重を除去すると、材料は力を加える前とまったく同じ状態に戻ります。曲線が直線的ではなくなり、直線関係から逸脱すると、フックの法則は適用されなくなり、試験片には何らかの永続的な変形が生じます。この点を「弾性限度」または「比例限度」と呼びます。引張試験のこの点以降は、それ以上の荷重や応力の増加に対して、材料は塑性的に反応します。そうなると、荷重を除去しても、応力が加わっていない元の状態には戻りません。
降伏強度
材料の「降伏強度」は、★ ★材料に加えられた応力において、塑性変形が発生しはじめる★ ★応力を指します。
オフセット法
材料によっては(金属、プラスチックなど)、★ ★線形弾性領域からの逸脱が容易に識別できないことがあります。そのため、材料の降伏強度を決定するためのオフセット法が許容されています。この方法は、金属の降伏強度を測定する際に一般的に適用されます。ASTM E8/E8Mに従って金属を試験する場合、オフセットはひずみの割合で指定されます(通常は0.2%)。オフセット「m」から★ ★線形弾性領域の線(傾きは弾性係数に等しい)を★ ★引いたときの★ ★交点「r」から求められる応力(R)が、★ ★オフセット法による降伏強度となります。
その他の係数
一部の材料の引張曲線には、明確な直線領域を★ ★持たないものがあります。このような場合、ASTM規格E111では、★ ★ヤング率と同様に、材料の弾性係数を決定するための代替方法が★ ★定められています。これらの代替弾性係数は★ ★セカント弾性係数と★ ★接線弾性係数です。
ひずみ
引張試験において、試験片が受ける伸縮量を求めることもできます。これは、長さの変化という絶対的な測定値で表すことも、「ひずみ」という相対的な測定値で表すこともできます。ひずみそのものは「工学ひずみ」と「真ひずみ」という2通りの方法で表現されます。ひずみの表現としては、工学ひずみが最も簡単で、最もよく使われています。工学ひずみは、初期の長さ()に対する長さの変化量の比率を指します。真ひずみもこれに似ていますが、試験の進行に伴う試験片の長さの瞬間的な変化量
に基づいています。ここで、Liは瞬間的な長さ、L0は元の長さです。
詳しくは、「引張試験と引張試験機に関するFAQ」を参照してください。